11月に入り、あれだけ荒れ狂った天候も安定し、美しい秋晴れが続くようになりました。皆さまには如何お過ごしですか?
御礼と ご報告が遅くなりました。先日は再び多くのみなさまにご出席いただき、お陰様で盛会のうちに終えることが出来ました。誠にありがとうございます。
今回の選曲は、R. シュトラウスのヴァイオリン・ソナタ以外は小品ばかり・・・という ちょっと趣向の異なるものでしたが、多くの方々から「次から次へと繰り出される素敵な曲目に心を奪われ感動しました」という嬉しいご感想を頂いています。
今回は長年の友人、コレット・ヴァレンタインがテキサス州オースティンから再び来日し、とても楽しいアンサンブルが可能となりました。偶然だったのですが、ゲストの岡ノ谷一夫先生はメリーランド州立大学で博士課程をおさめられています。コレットも学士と修士課程をメリーランド大学にて取得しているんですよ。岡ノ谷先生とお話していたら、在籍時期も重なっていて思わぬご縁にビックリ!冗談好きでいらっしゃる先生は”二人が在籍中にデートしていたかどうか・・・それは分かりませんよ” などと茶目っ気たっぷりにおっしゃり、皆で大笑いしました。
”小鳥と人間だけがリズムを取り歌うことが出来る”といったインパクトの強い先生のお話にお客様皆さま大変驚いていらっしゃいました。先生のお話は伺っていて本当に楽しく、不思議な自然界のメカニズムに改めて興味をそそられました。豊かな時間をありがとうございました。
さて、当日配布したプログラムに 選曲の思いなど認めました。聴きにいらして頂けなかった方々へのメッセージとして、その一部を下部に引用させてくださいね。
≪様々な思いをたずさえて・・・≫
なんてことでしょう・・・あまりに多い自然災害の数々。特に前代未聞の規模だった台風19号による被害の酷さに唖然とし、哀しみの ため息が出るばかりです。犠牲者の方々のご冥福を祈り、被災者の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。台風の被害は大きな衝撃でしたが、実はもうひとつ悲しい報せがありました。
長年大きな刺激を与えて続けてくださった、イラストレーターの和田誠さんが今月7日にご逝去されました。和田さんの作品には彼の温かく優しいお人柄が反映されていて、目にする度にいつも心が ほんわかとしてまいります。
当コンサートのロゴ・マーク、ヴァイオリンを弾くネコちゃんは、和田さんが『マザー・グース』(英米における伝承童謡)から選んでデザインして下さったもの。ジャンルを問わず 大変博識でいらっしゃり、帰国の折りには“コンサートの打ち合わせ”と称して(笑)盃をかたむけながら沢山のことを学ばせていただいた楽しい時間を思い出します。ご冥福を心よりお祈りいたします。
このコンサートのために私の大好きなレパートリーを並べてみたら色彩豊かなポエトリー(Poetry)が出来上がりました。だからタイトルは≪音の詩人たち≫。
リヒャルト・シュトラウスは19世紀から20世紀にかけてドイツが輩出した最大の作曲家です。リストやワーグナーの後継者として交響詩(Symphonic Poem)や楽劇(ワーグナーによって創始されたオペラ様式のひとつ)の分野で後期ロマン主義の極点に到達した彼は、斬新な和声や巨大な管弦楽編成を用いることで近代音楽への一つの方向性を拓き、次世代の作曲家たちに多大な影響を与えました。19歳の頃の作品10「8つの歌」はヘルマン・フォン・ギヨムの詩『最後の木の葉』による歌曲集。第8番<万霊節>では亡くなった大切な人への思いが心に染み入るように歌われます。因に、万霊節はキリスト教では すべての死者の魂のために祈りを捧げる日(通常11月2日頃)で、亡くなった人の魂が家族のもとに帰ってくると考えられていて(季節は異なりますが)日本のお盆の慣習に通じるところがありますね。あまりに美しくてヴァイオリンで演奏したくなりました(笑)。24歳の時に作曲された、壮大な構想とエネルギー、詩心溢れるヴァイオリン・ソナタ変ホ長調作品18。第二楽章(Improvisation: Andante cantabile)で繰り広げられる夢のような幻想性と煌びやかなハーモニーはオペラ『ばらの騎士』を彷彿させます。
フランス人作曲家オリヴィエ・メシアンは敬虔なカトリック信者で、“音楽に於ける人間性の回復”を常に念頭に作曲。音を聴くと色彩などを感じるシナスタジア(sinesthesia=共感覚)の持ち主であったといわれています。鳥類学者として世界中の鳥の声を採譜して作曲するなど、“自然界のすべてに神(絶対者)の造形の妙をみる”という神秘主義的なカトリック世界観に基づいて新しい音響を探求し、ピエール・ブーレーズを始めとした前衛音楽作曲家たちに大きな影響を与えました。エキゾチックな美しいハーモニーによるヴォカリーズ・エチュード(1935年)からメシアンの世界をちょっぴり垣間みていただけたら嬉しいです。今日のゲスト・岡ノ谷一夫先生は、“音楽と言葉は、鳥の歌がもとになっていると考えています”と仰っていますが、鳥の声にこだわりを持っていたメシアンは、もしかすると岡ノ谷先生に相通ずる感性の持ち主だったかもしれませんね。
武満徹さんは日本を代表する現代音楽作曲家ですが殆ど独学で音楽を学んだとのこと。洋楽器で編成されるオーケストラに尺八などの和楽器を取り入れた作品『ノヴェンバー・ステップス』は西欧の音楽家・評論家に衝撃を与えました。1951年に詩人・滝口修造がひらいた若手芸術家集団「実験工房」の結成メンバーに加わり、前衛的な音楽活動を展開します。ヴァイオリンとピアノのための作品『妖精の距離』(1951年)は滝口修造の同名の詩からタイトルをとっています。そして≪妖精≫がキーワードとなり、私のイメージはR.シューマンの『おとぎの絵本』に繫がりました。本来はヴィオラ曲なのですが、そのロマン性に魅了されての挑戦です。
コンサート実現のために いつも温かく後押しして下さる実行委員会の皆さま、そして、コンサートの現場を支えるスタッフの方々、ご来場の皆々さまに心より御礼申し上げます。
大津 純子
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次回は2020年4月19日(日曜日)となります。会場は同じ代官山ヒルサイドプラザ、開演時間も午後5時半です。喜んでいただけるプログラムを思案中です!お楽しみに!!
どうぞ又皆さまお誘い合わせの上ご出席くださいね!!