２００５年２月５日 記　

時差による不眠というのは人それぞれパターンが異なると思うのですが、私の場合、ニューヨーク・日本間は昼夜まっ逆さまで、アメリカが冬時間の現在、時差が１４時間（日本が先行）もありますから、行き来を何度も繰り返すと体内時計が相当狂ってくるわけです。メチャクチャに疲れていて死にそうに眠たいのに、いざ横になっても１，２時間で目が覚めてしまったりします。そのあと眠りなおしがきかないのが辛いのです。何日も不眠が続くと神経が立って、より興奮状態になり、それで一層眠れない・・・という悪循環がおきます。

明日が大変だから眠らなくちゃ〜〜〜と思えば思うほど目が冴えてきて、そのうちに、あぁ、アレもコレも手を付けられないままだ・・・とか、暗譜しなくちゃならない曲が頭の中をグルグルと回りだし、眠ってるどころじゃなくなってしまったり・・・。翌日に少しでも休める時間があればいいのですが、そうは問屋が卸さないことが多くて、神経を休めたいときに休ませられない・・・お肌も荒れるし、クマはできるし、美容上も最悪！ 以前に睡眠不足をズッと続けていたら、ヘルペス（帯状疱疹）になって大変な苦しみを体験していますから、兎に角「眠る」ことは大きな課題になっているのです。

ヘルペスを体験されたことおありですか？ それはもう苦しいもので、私の場合は右脇から背中に出たのですが、１０秒おき位に訪れる激痛は凄まじくて、右脇の肉がグワァ〜と動き、息も絶え絶え"身もだえ"し、兎に角、大変な体力を消耗してしまいます。絶対安静・即入院 − とお医者さまに宣告されましたが、コンサートを控えていたため、取り敢えず一週間は毎朝点滴を受けるために病院通いして危機？を脱出しました。

時差をものともせず、世界中を飛び回る演奏家やビジネスマンたちは一体どのように体調をマネージしているのだろうか、というのが最大疑問符だったのですが、いろいろ聞いて見ると、メラトニン、睡眠薬、精神安定剤などに頼っているという人たちが多いのですね。メラトニンは試してみたけど余り効き目が得られません。薬類は生来好きじゃないし、身体への影響が怖いけれど・・・と、お医者様に相談したのです。すると、誘眠剤は睡眠薬とは異なり、睡眠薬ほど神経を麻痺させる力が強くないから依存症になったりしないし、副作用（目覚めてもボーっとしていたりとか）もあまり無い・・・睡眠薬は意識を完全にノックアウト？してしまうけれど、誘眠剤は文字通り、最初の"眠気を誘う"役目を果たすもので、効力はせいぜい４，５時間。３〜４日服用を続けているうちに睡眠パターンが出来上がってくるから−という説明にチョッピリ安心して、非常時に使えばいいや、と処方箋を書いて頂きました。

ある時、アメリカから日本に飛び、数日後にベトナムへ・・・という演奏旅行スケジュールでしたから、体内時計はメチャメチャで、何日もロクに眠れない状態が続いていました。コンサート前夜こそシッカリ眠っておかないと集中力が散漫になるから・・・と、夜中まで悶々とした挙句に意を決して服用。翌日は昼と夜の演奏が組まれていたため早起きしなくてはならず、期待したほどの睡眠は取れませんでした。そして演奏の時間を迎えたのですが、弾いている内に、次の音は何だったけ？ 私は何してるの？ ・・・突然、頭の中が真っ白になり、脳と指先との繋がりが断ち切られたような状態になったのです。もやもやした霧の中、無我夢中の模索を強いられました。なんとか切り抜けたと思ったものの、夜の演奏最中にも全く同じ＜脳のスポンジ化＞が起こったのですね。＜プッツン状態＞とはかくありなん・・・と認識。ひぇ〜、怖いですよぅ！

どう考えても誘眠剤にしか原因が思い当たりません。私が薬を飲んだ時間（夜中過ぎ）が遅すぎたため、その効果が後になってから出たのではないか・・・と言う友人もいたのですが、アメリカに戻ってから主治医に話をしたら、誘眠剤も神経を鈍らせる役目を担っているのだから、脳からの信号を乱し、通信を麻痺させ、脳の"白紙"状態を起こさせる可能性は充分にある。「演奏」という、細かい神経を使う精神的に張り詰めた状態では、脳の僅かな伝達ミスが大きい影響を及ぼすのかもしれないねぇ・・・普通の生活のなかでは、そういった異常に気付くことなく過ごしてしまうかもしれないけどね − と興味津々な面持ちで、私の体験した症状について色々と質問されてしまいました。"ふ〜ん、じゃぁ今度は軽い精神安定剤を処方してあげよう"・・・なんてことでしたが、もう薬類はたくさん！！

最近は"眠れりゃラッキー"と開き直ることにしていますが、でもやっぱりツライものですよ〜。どなたか、絶対に眠れる体操、とか、自然療法をご存知でしたら教えてくださいませんか？　近々の『週刊新潮』＜掲示板＞ページに、２月２５日（金）代官山コンサートの告知とともに"ＳＯＳ"が出ますので、そちらにご連絡をお願い申し上げまぁ〜す。