Good Old Days 大津純子ロゴ
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Good Old Days シリーズに皆様から寄せられたメッセージです。
from 黒田恭一(音楽評論家)
大津純子と佐藤允彦がきかせてくれる新世界音楽万華鏡
旧世界の音楽もあれば、新世界の音楽もある。音楽の世界ははてしなく広く、多様である。
素敵な音楽がこんなにたくさんあるというのに、ぼくはまだ、何もきいていないと気づいて、呆然とすることがある。
 コンサートで演奏される作品にしても、近年、かなり改善されてきたとはいえ、あいかわらず少なからず偏りがあって、ききての視界は旧態依然たるままである。遠い日のコロンブスにならい、思いきって大海原に漕ぎだしてみないことには、音楽の新世界の発見は難しい。
 うれしいことに、ぼくらは、今回、音楽の新大陸発見を目ざす大津純子と佐藤允彦という絶好の水先案内人をえた。しなやかで、しかも鋭敏な感覚をそなえた彼らである。
このシリーズに導かれるままについていけば、ぼくらは、きっと、音楽の視界を一気に広げることができる。
from 柴田元幸(著述家/東京大学助教授)
ヨーロッパの延長としてのアメリカ、ヨーロッパの超克としてのアメリカ、近代の究極としてのアメリカ、<ここではないどこか>としてのアメリカ、夢の国アメリカ……大津純子のステージ では、それらすべてのアメリカが出会う。それも、とても楽しいかたちで。
from 岩井克人 (東京大学経済学研究科教授)
大津純子さんは、現在アメリカのニューヨークを中心に活躍しているヴァイオリニストです。実は、私が大津さんの名前をはじめて聞いたのは、30年以上も前になります。当時アメリカの大学院に留学していた私の耳に、大津純子というヴァイオリニストが芸大からジュリアードに留学しているという話が伝わって来たのです。ジュリアードを卒業された大津さんの活躍ぶりは、その後しばらく暮らしていたアメリカで、そして帰国後は日本でも耳にすることになりました。

だが、私がはじめて大津さんに直接お目にかかったのは、2002年のことでした。大津さんは"Good Old Days"と題した室内楽シリーズを企画し、第一回にあたる「アメリカの<素敵な時代>」が大変に好評であったという新聞記事を私が読んだ直後でした。シリーズの第二回目はチャップリンの映画音楽を柱にするということで、その時代背景としての1930年代のアメリカの大恐慌について話せる人間として経済学者の私に白羽の矢が当たり、お会いすることになったのです。私は音楽に関しては全くの素人で最初は気が進まなかったのですが、チャップリンの映画と音楽のファンでもあったということからも、企画に参加することになりました。だが、それ以上に、外国に住みながらも、いや外国に住んでいるからこそ、「失われた10年」の中で単に経済的だけでなく文化的にも停滞してしまったように見える母国の現状を大いに憂い、音楽を媒介として日本文化の活性化に何とか貢献したいという大津さんの情熱に突き動かされたことが大きかったのです。

大津さんの企画は、アメリカの音楽をひとつのクラシック音楽として提示することによって、これまでヨーロッパ中心主義的であった日本人のクラシック音楽に関する認識を根本的に変えようと言う野心が秘められています。そして、それはさらに、一国中心主義的軍事大国としてのイメージばかりが強大になりつつある昨今のアメリカに関して、ヨーロッパの文化的影響から抜け出した独自の文化を築き上げつつあった一昔前の<素敵な時代>のアメリカをまさに日本の現代に甦らせることによって、今までとは異なった日本とアメリカとの繋がり方を求めていくという試みでもあると思います。

 「アメリカの<素敵な時代>」と題された昨年の"Good Old Days"のコンサートにおいては、わたし自身はつまらないことをしゃべってしまい大した貢献はできませんでしたが、大津さんのヴァイオリン、そして佐藤允彦さん等の共演者とのアンサンブルを聞くのは、本当に楽しい経験でした。途中から、私の隣に座っていた老夫婦は二人とも音楽に合わせて楽しそうに足をゆすり始め、私もつられて足をゆすり始めたことを思い出します。

 "Good Old Days"の企画は、第三回にあたる今年はアメリカの文化に触発されたヨーロッパの巨匠たちを取り上げると聞いておりますし、来年はアメリカ音楽が純粋にアメリカ音楽となったジャズを取り上げる予定だということです。この楽しく、また野心的な室内楽シリーズはこれからも長く続いて欲しいというのが、私の希望です。